第2回 会長 長友啓典×料理研究家 松田美智子 前編
「松田美智子料理教室」にて
出席者:長友会長、松田先生/進行:若山事務局代表
お好み焼きへの新しい視点
松田「お好み焼きの一番の定義は…口に合うかどうかですか。」
若山「とうもろこし、チーズに、たまご、めずらしいレシピ。」
松田「だから、粉を使ってたら、お好み焼ってことで。」
長友「家庭でこんなんできたら、毎日すぐに家に帰るよ。」
松田「簡単!店のメニューにしてもらおう。」
長友「このホーロー…。」
松田「これ、ホーローじゃないです。陶器。土偶、焼き鍋です。」
松田「鉄板が良ければ、鉄板もいまあるので、鉄も行きましょうか。」
若山「ガスコンロがあって、行為う鍋もあって。」
松田「でも同パターンもあれば。」
若山「こういう取材は…いいよね、対談の話とは別に、こう…今後ね、レシピ集とか作りたいですよね。それ、いいですね。」
松田「次は魚介バージョンなんで、エビとレンコンと…なんですけど、」
松田「何飲むか、言ってくださいね。」
若山「ちゃんとやられたことはないですか?お好み焼きというものは?」
松田「お好み焼は、あんまりねえ、料理研究家の仕事ではないですよね。特に私、東京だし、お好み焼は家でもあまりね。」
長友「松田流でやってくださいよ。」
若山「基本的にソースではなく、しょうゆなんですね。」
松田「そうですね。ソースも買ったんで、これを長友先生にご教授いただいて、違う味に。どうしたらお好み焼きっぽくなるか。一応、夏の素材にしてみましたがどうでしょうねぇ。」
若山「エビとレンコンは夏の素材なんですか?」
松田「いいえ、夏の素材じゃないです。新レンコンは旬の素材だし、じゃあ、お好み焼に夏の魚介ってなんなのって言われて、エビかなあって。」
松田「エビがプリプリになるように、冷凍のエビに、ニンニクとナンプラーと片栗粉を、」
長友「こういうの、はじめてです、いいじゃないですか。」
若山「上から勝負するのははじめてですね。」
松田「えー本当に?ひっくり返そうと思ったんだけど。え、じゃあ、どうすれば?下から責めるんですか?でもこれじゃエビに火が通らないでしょ、」
若山「エビは避けとくんです。」
松田「あ、避けとく!」
若山「ああ、いやぁ、これも新しいかも。」
長友「これで焼ければ、それでええねんて!」
松田「こう、好きにガーリックチップとか振って。」
長友「いいねぇー。常識外がいいねえ。」
松田「褒められてるんだかなんだか…」
若山「そんなバリエーションの自由さがお好み焼ですよ。」
長友「こんなん、決まりはないんだもん。」
松田「お好み焼って、”お好みに焼け”ってことですか?」
長友「”勝手に焼け”ってことやな。」
道具から変わる新しいお好み焼き
若山「この一人鍋はいいですよね。」
長友「これは、出来合いであるわけ?開発したにではなくて。」
松田「これは、私の道具で、これは別のかっぱ橋の金物屋…あの」
長友「これ、セットで売ってるわけじゃなくて?」
若山「これを家庭用の高級お好み焼きセットとして…。」
松田「そしたらねぇ、逆に「釜浅」じゃなくて、南部鉄ですぐ作るので。そしたら商品に。」
若山「いいですよね、商品化されたら欲しいですよね。」
松田「っていうかね、「自在道具」って、私の小さなブランドがあるんですけどね。鉄と土偶とか、なんか日本のものばっかり。」
若山「南部って、青森の南部ですよね?」
松田「そうです。今鉄分とか大事ですし、特に高齢化してきた時に鉄分が大事でね酸が入った方が、より鉄分の抽出がいいんですね。だからトマトなの。今日もこれ、トマトソースで、最後にトマトを焼いてグチュっとしたのを上に乗せて食べたらどうかなって。」
若山「酸を使うと鉄分が出ると…。」
長友「これは、なかなかなもんですよ。」
若山「道具の開発も大事ですよね、お好み焼きの普及に。ホットプレートだけじゃすまないですよね。」
長友「これ、なかなかいいよね。」
若山「これ、鉄板じゃなくて土偶で焼くメリットというのは?」
松田「メリットはねぇ、熱伝導も蓄熱もいいし、遠赤外線で熱が回ってくるから、中から熱がきて、こうフワッと柔らかくなるの。」
若山「平面だけではあまり意味がない?」
松田「そんなことないですよ。これだと、いろいろなものに使えるんですよ。これですき焼きをすると、お肉が柔らかくなって、おいしいんです。あと鴨鍋とか、鴨焼いたらおいしんですよ。」
長友「それは、きっとうまいなぁ。」
松田「これ、微妙に真ん中がふくらんでいるんですよ。これはアジアの鍋の知恵なん ですけど、そうすると、鉄板焼、オイル焼き、みたいにお肉を焼くときにお野菜をまわりにおいておくと、お野菜のまわりに油がちゃんとうまいこといってね。これが、結構、いい味で。」
若山「お好み焼きの新しい世界が開けますよね。」
若山「焼く鉄板とか、陶器とかで味が変わるっていうのは、おもしろいですね。」
松田「銭とか、土偶とか、金属を通さないと、食材の味がちゃんと保てるので。」
若山「戦後、広島で「みっちゃん」が屋台を引いていた時から、ここまでくるのって、すごいですね。」
松田「これで豚の油がじわっと入った方がおいしいので、もう一度ひっくり返して…。」
若山「お好み焼きは料理としてのかかる時間。手間はどうなんですか?」
松田「手間はかからないけど、鍋と一緒で、ベースを作っておいて、家族でこうやって、お父さんがここに何かした方がおいしいよとか言いながら、好きなものを乗せて食べるっていうのはいいですね。」
若山「みんなで作る楽しさという魅力があるわけですね。新しい発見だなあ。」
長友「お好み焼で、それができるんやったらね。」
若山「日本人の料理ですよね。」
素材から見る、新しいお好み焼き
若山「ここだけの話ですけど、松田さんも冷蔵庫の残り美濃で料理することとかあるんですか?」
長友「お好み焼きのめんめんと焼く道やしね。」
若山「原点ですからね。」
長友「今日はセレブのお好み焼きやからね。イメージは芦屋のお好み焼。」
松田「いや、でも残り物でいけますよ。」
若山「松田さんは鎌倉だから、芦屋、鎌倉焼きで。」
松田「そんなの関係ない!笑 これだって、別に冷凍のエビと、新レンコンと…。」
長友「これ、絶対にうけるよ!」
松田「いや、おいしいかどうか分かんない。とにかく時間がなかったから。」
若山「研究してくれてるじゃないですか、」
松田「いえ全然研究してなくて、もうちょっと時間があったらね。まず、お好み焼き屋さんにいろいろ行って、お好み焼とはどんなものかを知って…。」
長友「知らんからよろしい。お好み焼き屋に行ってると、こういう発想は出てこない。」
松田「お好み焼のレシピなら、いくらでも色々と考えますけど。」
長友「お好み焼き屋にこんなん教えたら、すぐパクられるなぁ。」
若山「この燃料は?」
松田「これはイワタニの新製品で、強火もとろ火もいけるんですよ、これも連載に使ったりしたので。」
松田「長友さんにはここに、ネギを…。あとソースが足りなかったら。」
若山「1回テストしたんですか?」
松田「実は、今日の料理はテストしてないんです。時間が無くて、大変失礼だと思っ担ですが。」
松田「ソースがないけど、まあトマトの酸味でなんとか…。」
長友「このトマトソースっていうのはなかなか!」
松田「で、ちょっと酸味をしぼってみると、家庭のもので自分の味をいろいろ作ってください。青のりも好みで、辛いのがいい人はコショウを足してください。」
松田「でもレンコンおいしいですよね。食感が良くて、どうですか?」
長友「おいしいです!下味ついてるの?」
松田「下味ついてます。これ、冷凍だからエビはプリントするように、ニンニクとナンプラーと白ワインにつけて下味をつけて、片栗粉でプリッといくようにしています。」
長友「また、このソース。抜群やで!」
松田「じゃあ、良かったです。でも甘いかな。」
長友「ヘラも使い慣れてるねぇ。」
松田「使い慣れてないですよ、失敗しそう。」
松田「はい!度胸」(ひっくり返す)
一同「おおおー!」
松田「あんまり、押さえちゃいけないって言ったよね?」
松田「これはオイスターソースとしょうゆで。」
長友「これは、もう少し焼いた方が、ええんちゃうの?」
松田「これ、もっと焼くんです。味がしみるように。」
後編に続く