第6回 お好み焼の品、「いまり」。

恵比寿から白金方向、恵比寿3丁目に向かってかなり歩く。

お腹をすかして、今日も歩いた。

人気店だ。しかし一人くらいは大丈夫だろうと思って行ったら、

ラッキー、1席あいていた。鉄板の前に8人しか座れないお好み焼屋さん。

だから誰かといっしょの時は、歩き損になるので

電話で確認してからいったほうがいい。

主は31歳のイケメン、長身、独身。しかし東京のお好み焼屋はいい男が多いね。

兵庫県は尼崎市の武庫之荘といって、阪急沿線の中でもこざっぱりしていて、

好感度の高い街の出身。

すぐそばを武庫川が流れている。

表現下手だな。

ボクはなんと学生時代、武庫之荘の駅から一つ通りを奥にはいった住宅街の

大きくて古くて立派なお屋敷の離れに下宿していた。

その街でなんと彼のお母さんは20年以上もお好み焼屋さんを経営しているそうだ。

ま、ボクが住んでいたのは40年以上前だから、出会ってはいないんだけど。

話しを聞いた時は驚いた、懐かしかった。

さて本日の注文は、「昔ながらの大阪モダン」。いいネーミングだ。

そそられる。そしていつも食べている。

混ぜた具材をじっくり焼く、かなり香ばしく焼いたそばをのせる、

豚肉を重ねる、ソースをたっぷりかける。そばが適量でいい。

小振りがいい。写真より焼き具合はきれい。何よりも味に品がある。

一人で食べきれないことが多いのだけど、ここのは残すことがなくていい。

とん平もしかり、かりかりのチーズ焼きも香ばしくてビールにあう。

メニューを見ると、「おかんの、、、、、」というのがいくつ見受けられるが、

お母さんがやっているお店の味を継承していこうという気持からかな。

東京でこの店を始める前に、実家のお母さんの店に仲間を呼んで、

何ヶ月も練習したそうだ。仲間たちは遠慮がないから

ビシビシいってくれたらしい。

彼の焼いている様はかなり美しい。

丁寧である。見ていて焦れったくなる寸前で動く。憎い呼吸。ピシッとした姿勢。

スピードとための妙。たぶん焼いている自分の姿形を相当研究したと思う。

もう一つ。焼き終わった時の鉄板の上にはお好み焼しかない。

きれいに片付けられている。見事な簡潔さ。

料理が美味しく見える。美しく見える空気がある。

お客に出来上がりを待つ時間を過ごす楽しみを与えてくれる。

そう、お好み焼といえども、、、、、、

ビール飲みながら、待ちながら、ボクは見ている。

きょうもいい時間をありがとう。

帰り際、「いまり」特製のマヨネーズをいただいた。

ボクはお好み焼には掛けない主義だけど。

若山憲二


恵比寿 「いまり」 TEL :03-3440-6600